2010年05月25日

告知

かなりの勢いで雨が降っていたけれど、その病院は傘をさして歩くには少し遠い距離にあるので、迷ったあげく僕は雨合羽を羽織って自転車に乗った。

途中にひとつだけあるJRの踏み切りで運悪く引っかかり、上下合わせて5本もの電車を見送ることになった。
待たされているあいだもどんどん雨に染まっていく袖口を見ながら「今日はついてない日だ」と思った。
だいたいこういう日は何をやってもうまくいかないから、何もせずに家で寝てしまうにかぎる。

僕はここで引き返して雨合羽を脱ぎ捨て、家で布団をかぶる自分の姿を想像してみた。
だめだ。今日はそんなことをしても何の解決にもならない。
踏み切りがあいて、ペダルはいつも以上に重かったけれど、僕はふうふう息をしながら自転車をこいだ。

病院には予約時間の15分前にきっちり到着した。
そして予約時間を過ぎても呼び出されなかったのは、これまでにも予約時間に呼び出されたためしがないので想定どおりだった。

なので10分遅れたくらいで呼ばれたのは幸運なほうといえるのだが、僕より前から待合室にいた老人が「わたしのほうが先に待ってました」と呼び出した技師に文句を言った。
「ごめんなさいこの方はご予約されていたので」と技師が答えると老人は決まり悪そうな顔で引き下がった。
そうだ。僕はこの日を2週間も待った。

造影剤の注射は痛かった。
こないだの血液検査で腕から試験管6本ぶんもの血液を抜かれたときよりもずっと痛くて、この若い技師は刺す場所を間違えてるんじゃないかと少し疑ったけれど、結局彼は正しかった。
「造影剤が注入されると少し体が熱くなりますよ」
と言われたとおり、しばらくすると喉の奥がカーっと熱くなり、その熱が胴体を通って陰のうまでじわーっと染み渡った。
初めての感覚に「おおう」と小さく声を出したけれど、CT室には僕しかいなかったので誰にも聞かれなかったはずだ。
TOSHIBAと書かれた装置から発せられる「息を吸ってください」「止めてください」といった指示は少しだけカーナビを連想させたものの、僕はただただ鯉みたいな気持ちで従い、撮影は10分程度で終わった。

検査のあとは診察の予約が入っていたが、検査が遅れたせいで診察時間が迫っていた。
僕は院内の自販機でビッグサイズのブラックコーヒーを買い、その場で一気に飲み干してから待合室に向かった。
しかし予約時間を実に1時間以上過ぎても呼び出されず、おかげで退屈しのぎのつもりで持ってきたPSPの充電は途中で切れてしまい、おまけに僕の腹はぐうぐうと鳴った。
途中で何度かトイレに行ったり、思い切って別のフロアにある売店まで本やおにぎりを買いに行ってみたりしていたらついに呼び出された。

検査の結果は悪性の腫瘍などではなく、すい臓のしこりは非腫瘍性の「のう胞」で、ほうっておいていいらしい。
肝臓のしこりはCTでは特に写らず、これも「問題ないでしょう」とのことだった。
血液検査の結果にも特に異常はなく、でもいちおう経過観察のために3ヶ月後にもう一度エコー検査をしてみましょうという話になった。
「やっぱり月曜日は特に混むんですかね」と僕が言うと「お待たせしちゃってすみません。わたしは月曜だけなんですよ」と女医が言う。
他の病院と掛け持ちということだろうか。
月曜だけの勤務でこの人はいくらくらいもらうんだろう、とか考えながら若い女医の横顔を見ると――こないだはそんな余裕がなくて気づかなかったけれど――なかなかの美人だった。

僕はまだまだ長生きできそうです。
会計を済ませて外に出ると雨があがっていて、僕は軽快にペダルをこぎながら泣いたり笑ったりした。
posted by ハジメ at 17:01| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
よかったです・・・。
でもこれって、告知じゃないわよね。(^^;)
Posted by Joy at 2010年05月28日 16:43
問題ないという告知を受けました^^
Posted by ハジメ at 2010年05月28日 18:03
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